其の質問に、戸惑った。
如何答えればいいかわからなかったし、すぐに答えが思いつくわけでもなかったから。
それでも何度も何度もノーマは訊いてくる。彼女は答えを出すまで折れる様子が見えないし、シャーリィはシャーリィで興味津々らしい。
この状況で、答えずに居られる奴がいるのならば、是非ともお眼に掛かりたい。
そんなことを考えながら、私は諦めて口を開いた。
「声が、するんだ」
「声?」
そう、と頷くと、シャーリィもノーマも眼を丸くして、動きが止まった。
ああやっぱり話したくない。
そんな意味の溜息を吐く。鏡を見なくても分かる。私の頬はきっと赤い。だいたいこんな状況で、クーリッジが帰ってきたりしたら如何すればいいんだ。
「私を呼ぶ、クーリッジの声が」
いつからだろう、それを心地好く思うようになったのは。
胸の奥から、何度も何度も。
――― クロエ。
「戦ってる時や、日常の会話」
そんな、当たり前な、些細な、呼び声。
其れを、愛しく思うようになったのは。
「そんなものが、何度も何度も、思い出せて、忘れられなくて」
なんのこともない会話の切れ端、息を合わせるための掛け声、焦って荒げられる声や、単なる呼び声。
気がついたら、その一つ一つが、
「……、好きに、なった」
この場に、クーリッジが居なくて、本当に良かったと思う。
( あの声がこんなにも )
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