「なーにしてんだ、こんなところで」

 午後ののんびりした日差しと時間。
 ひょい、と顔を出してきたのはルークだった。夢中に食べていた筈のフローリアンが嬉しそうに名前を呼んで飛びついて、急なタックルに慌てつつもルークきちんと抱きとめる。

「アニスとティアがね、ケーキ作ってくれたの!」
「ケーキぃ?」
「うん!いつも食べてるアニスのも美味しいんだけど、ティアのアップル・パイがすっごい美味しいんだよ!」

 だからと言って厨房で食わなくても、なんつー食欲だ、とかなんとか顔に書いてルークはティアとアニスを見る。というか主にティア。
 ティアは苦笑して見せて、

「ちゃんと持っていこうって言ったんだけど、フローリアンが聞かなくって」
「この子、もう四つも食べちゃったんだよね」

 それにアニスが続けた。だって美味しいんだもん、とフローリアンが騒ぐ。アニスとしては、ティアのアップル・パイだけ異常に褒められていてなんだか頂けない。

「あたしが作っても其処まで食べないくせに……ぶつぶつ」
「はは、アップル・パイに関してティア以上の奴はそうそういないだろ。こいつ林檎好き過ぎだし」
「ルークのえび好きに言われたくないわ」
「えび好きで何が悪いんだよ。今えびグラタンに手ェだそうかと思ってるんだぞ!」
「えびグラタン?美味しそう!」
「フローリアン、ルークの料理に期待しないほうが良いと思うよ」
「あのなっ!」
「だってあんなに頑張って食べれなくも無い、ってラインだもん」
「じゃあ食べなきゃよかったろ!大体ナタリアよりマシだってーの!!」
「其れは……言えてるけど」
「ティア、ナタリアに言いつけちゃうよ?」
「ちょ、ちょっと待って!今の無しにしましょう!」

 そんなじゃれ合いをだらだら続け。
 脱線した話をルークが戻した。
 つまりは、アップル・パイの話である。

「あ、つかもうねえの、アップル・パイ」
「残念でしたー」
「アニスが二つも食べちゃったんだよね」
「フローリアン!其処は秘密にするべき!ティアも笑ってるけど今二つ目でしょ!」
「え、そ、そんなことは全然全く…!」
「じゃっ、それが最後なんだな!」

 今にも食べてくれと言わんばかりに輝くアップル・パイを、其の右手にあるフォークで切り取ったところで話を振られ、慌てて弁解しようとするティア。
 其れとほぼ同時にルークが動き、ティアの腕を取って、そのままアップル・パイを口に運んだ。
 眼を見開くのはティア。それ以上に開いたのが、アニスだった。

「あっ、ちょっと、ルーク!」
「……ん、美味い。やっぱティアのアップル・パイは美味いな!」
「え、あ、ありがとう……」

 喜色満面に言うルークと、照れつつ礼を述べるティア。

 おいおい其処、何間接ちゅーとかかましてそんな惚気全開してんじゃねえよ。

 アニスは思ったが、流石に口にしないで置いた。
 後で大佐にチクろう、とか決心して。




 数時間後、ルークとティアは相当からかわれた。

( 甘い関係? )


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