01.それは呼び声にも似た

 何よりも、誰よりも。
 他のどんなものだって、こんなに。
 こんなに、引き寄せたりは、しない。
 それは只一つ。
 唯一の、君の声。

 終りかけていた誓いを、
 託しかけていた約束を、
 思い出させてくれたのは。
 また思わせてくれたのは。

 君のその
 俺の大好きな、歌声だったから。

( さあ 行こう 君の許へ )

02. 遠く、遠く、遥か遠く

 如何して唄うのか

 別に理由なんてない。
 別にわけなんてない。

 私に出来ることはこれしかないから
 私にはこれしか出来ないから

 彼が好きだと言ってくれた、
 綺麗だと、言ってくれた、
 この声と、この歌と
 願いだけしか、持っていないから

 何処へも行けるとしても、何処へも行けなくても、
 ただ、声の限り
 忘れないように、思い出にしてしまわないように、過去にしないように

 届いて欲しいと、願うだけ。

( 貴方へ なんて我侭は言わないから )

03. 変わらないメロディ

 最初に、そう思ったんだ。
 零地点は『会いたい』。
 じゃあ一は?
 俺の隣で、時々視線を合わせては結局俯いて顔を背ける君に、
 そうして欲しいと思ったから。

 そう言われると思わなかった。
 頼まれることなんて、数えるほどしかなかったことだから。
 でも、そう言って微笑う貴方を見ると、
 こそばゆくてしょうがなかった。

 だから、
 だけど、

 君と、貴方と、皆で、
 一緒に過ごしたあの日々と、何一つ変わらないこの歌を。

( 君の歌が聞きたいから 貴方がそう望むから )

04. 両手を広げて

 天使なんていうものは、あんなものかもしれない。
 なんとなく、そう思った。

 さすがに遠くて声は聞こえないよな。
 少し悔しいな。悔しいっていうか、勿体無い。
 あんなに綺麗な声なのに。

 一度ポロッと漏らしてちまったけど、
 綺麗だと言ったら顔を真っ赤にしていた。
 つか俺も恥かしかった……。
 喜んでいた、と思う。
 ……、なんか嬉しい。

 傍に行って声を聞きたいと思うけど、
 両手を広げて歌う彼女は、
 多分近づいたら、恥かしがって唄うのを止めちまうだろうな。
 だからやっぱり此処からで良いかな。

 見詰める景色に眼を細める。
 広がった腕が、朝陽を受けて、まるで翼みたいだった。

( 眩しいひかりも 天使の羽も 秘密の景色 )

05. きこえますか?

 心地よさそうに眠ってる。
 かわいいな、なんて思ってしまった。
 本来の目的も忘れて、顔が綻んでしまった。
 風はやわらかい。木漏れ日はあたたかい。
 これ以上条件の良い午睡は、きっと無い。

 ミュウだって、貴方の膝で眠ってる。
 気づいてる……わけ、ないわね。

 本当は、「風邪をひくから」と起こしに来たのだけれど、
 もう少し、見ているのも悪くないと思う。

 貴方の隣に腰掛けて、することもなく、ただ眠る貴方の隣に座るだけ。
 木漏れ日と風が心地好くて、なんとなく歌を口ずさむ。

 午睡の薄い夢の中へさえも、
 もしかしたら届くかもしれないから。

( だからお願い 貴方が目覚めるまで もう少しだけ )

配布元 → 『loca』様


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