平成１６年（フ）第２２８号破産事件 破産者 株式会社フォレックスジャパン
報告書（要旨）
平成１６年９月２７日
破産官財人 弁護士 与世田 兼稔
常置代理人 弁護士 照屋 林英
常置代理人 弁護士 上原 義信
常置代理人 弁護士 武田 昌則
第１ 破産会社の概要等について
破産会社は、平成１２年９月１日に資本金２，０００万円で設立され、主たる事業内容は、外国為替取引業務であった。本店は、沖縄県那覇市に、支店は、東京都、大阪府ほか５箇所の主要都市にあり全国展開をしていた。なお、本店、支店とも平成１６年２月２７日までに、従業員を全員解雇したうえで、すべて閉鎖手続を完了している。
第２ 破産会社の業務の特殊性について
破産会社の主たる事業である外国為替証拠金取引とは、一般に、顧客が約定元本の一定率（5〜10%）の証拠金を業者に預託し、外国為替の売買を差金決算で行う取引で、�．廛螢鵐轡僖觀燭鉢�IB型（取次ぎ・媒会型）があり、本件は�△領犒燭乏催�。即ち、破産会社が日本で顧客を募集し、ユニ社に取り次ぎ、ユニ社が香港、マカオで外国為替取引（運用）をするという仕組みである。現在のところ、日本では、このような取引についての法規制がないため、今後も本件のような被害者が発生する可能性が高い。
第３ ユニ社の経営破綻と本破産に至るまでの事情
ユニ会社は、平成１５年１１月５日、投資家に対し、一方的に多額の損失をしたので、経営が不可能となったから残存預かり金残高７０億、約30％の返金をすると表明した。これを受けて、破産会社の依頼を受けた當眞弁護団が投資家債権者及び台湾のユニ社代理人らと交渉してきたが、投資家救済の会が、當眞弁護団の処理方針を批判し、激しい対立関係が生じてきたことから、當眞弁護団は、辞任せざるを得ない事態となり、代わりに、救済の会の代表弁護士大城が返済事務手続きを引き継いで担当することになった。他方、ユニ社の破綻報道に接した債権者らにおいて、破産会社に対する批判の声が高まり、集団的な損害賠償請求訴訟が続々と提起されそうな動きとなってきた。そこで、公平な配当手続きの実現ということで、本破産手続きとなったものである。
第４ 管財人の管財事務について
�� 常置代理人として、照屋林英、武田昌則、上原義信を選任し、共同にて本件破産事件の調査、否認権訴訟の提起、香港・マカオにおける外国為替に関する法規制等について調査をした。
�� 管財人が引き継いだ預金債権及び回収した資産などの総額は、金１億２９万５８６８円であった。また、現時点において、救済の会代表弁護士および欠席判決に基づいて強制執行して債権回収をした２名の債権者を被告として、否認権訴訟を提起している。救済の会代表者弁護士との裁判は、裁判所よりの職権による和解勧告を受けており、近日中に和解が成立する見込みである。
第５ 香港・マカオ等の海外での調査状況
最小のコストで海外の調査を実施した。この結果、本件外国為替取引をなすには、香港においては香港SFC（香港証券・先物取引委員会）の許可が、マカオでは、AMCM（金融及び外国為替統制機関）の助言に基づく知事の許可が必要とされており、ユニ社は、いずれの地区においても正規の許可を得ていない業者であった今後引き続き海外での調査をなすとすれが数百万円単位の費用が必要となるが、この費用に見合うような結果が得られるかどうかは、全く不明ということであった。この件では、救済の会において、既に香港の法律事務所に委任して、刑事告発やユニ社に対する破産申立あるいは損害賠償請求を準備中であるとのことであったので、管財人としては、この手続の推移を見守るしかないのではないかと思料している。
第６ 破産財産について
破産財産の現状は、下記のとおりである。現時点での予想配当率は、１.858％である。
資産
�� 預金
管財人保管金口座 金９５７５万９９６８円
小口預金口座 金９７万７２４３円
�� 債権
保証金返還請求権 ４万５０００円
保証金返還請求権 ７万９０００円
贈与金返還請求（救済の会） ５０７５万００００円
供託金 ２００万００００円
以上回収見込額 1億４９６１万１２１１円 （� 椨◆�
�� 回収未定定額
敷金返還請求 額未定（帳簿額6,748,650円）
差押金の返還請求 額未定（請求額11,435,090円）
合計１億４９６１万１２１１円＋額未定
負債 一般破産債権 金８０億５０７２万５５００円（3166名）
第7 破産債権の認否の方針について
破産管財人の調査の結果、全債権者についての投資額と利得額、未回収残高（損失額）さらには、普及員、営業員も全氏名と受領手数料額が判明したため本件破産債権者の届出債権についての認否は、下記の方針で実施した。
�� 全債権者につき元本を基準として、損失の有無を調査して、利得がある債権者については、その利得額相当額につき異議を出す。
�� 債権者であり、かつ普及員、営業員であった人物の届出債権については、各人が受領した手数料相当額につき異議を出す。
�� 上記の作業段階で同一人物であるか否かについて疑問があっても、管財人の調査手法に寄れが、同一である可能性が高いと判断された債権者については、原則、すべて利得額について異議を出す。
�� 普及員、従業員の未払い手数料については、本件事案の特殊性に鑑み、全額異議を出す。管財人が、この方針を決定した理由は、�）楫錣梁臑真瑤稜忙査銚⊆圓�、損害賠償請求権を原因債権として届けていること、�∨楫鏤�件において、損害を観念する場合は、投資元本を基準とすべきであること、�Ｋ楫鐡蟷颪砲茲衢�益を得ている場合は、その利益額は損害から控除しなければ、本破産手続きにおける公平な配当の現実が困難であること、�に楫錣里茲Δ紛睛纂莪�を律する「金融商品販売法」の第５条１項は、「顧客が全条の規定により損害の賠償を請求する場合には、元本次損額は、金融商品販売者等が重要事項についての説をしなかったことによって生じた損害の額と推定する」と、同２項は、元本欠損額について、本件のような利得控除後の残元本と定義していることは、本件破産事件の処理においても合理的な基準であると思料されること。
第8 認定の結果
届出債権合計１１８億６４０２万１０７８円、異議の額３８億１３２９万５５７８円 認容額８０億５０７２万５５００円（届出総数3,287件のうち、１７１件については全額異議）
第９ 管財人の今後の方針について
管財人団として、今後、可能な限り早急に財団を確保し、出来得る限り早期に配当を実施し、本破産手続きの早期の終結をなるべく努力する所存である。また、今後も調査を進め、否認すべき行為を発見した場合には適宜否認権を行使する予定である。